親知らず

親知らずとは

現代人の顎に潜む親知らず。
何歳になっても生えてくることがあります

親知らずとは、永久歯が生え揃ったのち、前歯の真ん中から数えて8番目に生えてくる歯のことです。 まっすぐに生え、かつ周囲の歯や歯ぐきを傷つけたり圧迫することがなければ、本来は他の歯と変わらず、抜歯せずとも問題ありません。

しかし私たち現代人の小さな顎には、親知らずが適切に生えるスペースが足りないことが多く、その結果、傾いて生えたり、顔を出さずに埋まったまま周囲の組織を圧迫したりしていることがあります。

では傾いた歯には、どういった悪影響があるのでしょうか?

親知らずとその周囲で起きる急性的な炎症は、⻭と⻭の間で起こる微細な⻭周病の「巨⼤版」と⾔い 換えても過⾔ではありません。
つまり、⻭ブラシが届かず汚れが停滞した状態で菌の温床となり、⻭ の周囲の⾻を⼀部溶かしながら顎が腫れる。
⼀般的な⻭周病ではよほどのことがない限り顎が腫れるところまでの症状を出すことは稀です。

症例1:右下智歯周囲炎

症例2:左下智歯周囲炎

このような状態にしてしまうと,親知らずの⼿前の⻭まで⼤きなダメージを受けてしまいます。
傾いた親知らずは、それ⾃体が問題であること以上に、上下でしっかりと噛めている本来の仕事をしている健康な⻭をダメにしてしまうことです。

次のような症状は早期の受診を

  • 親知らずが生えている、親知らずが埋まっている状態で痛みがある方
    →周囲の歯、歯肉などを圧迫、もしくはプラーク残っている場合、歯肉炎・歯周病も考えられます。
  • 痛みがなくとも、親知らずが斜めに生えている方
    →周囲を傷つけてしまったり、ブラッシングでのプラーク除去が難しいため、むし歯や歯周病を引き起こすリスクが高まります。
  • ときどき親知らずの周辺が痛むが、数日我慢していると痛みが治まる方
    →このような状態の方は意外と多いですが、痛みに慣れるに過ぎないため、早期に受診されることをお勧めします。
  • 親知らずの手前の歯がむし歯になっている方
    →親知らず自身がむし歯、またはこの先むし歯になる可能性が高いといえます。
  • 親知らずの周辺の歯肉が腫れている方
    →親知らずが原因による可能性がありますが、親知らずを抜歯することでブラッシングしやすくなり、歯肉の炎症が改善へと向かいます。
  • 上または下の親知らずだけが生えている状態で噛み合わせると反対側の歯肉に当たったり、傷つけている方
    →傷ついた歯肉の炎症が進むと、歯周病を引き起こしてしまうため、抜歯をすることで歯周病の改善、予防につながります。
  • 歯科矯正を考えておられる方
    →歯科矯正を始めてから斜めに親知らずが生えてきた場合、せっかく矯正した歯が台無しになる可能性があります。親知らずが生えている状態・埋まっている状態に関わらず、矯正前の抜歯をお勧めします。

    成人前後の年齢が、一番体への負担が少なく抜歯できるといわれています。 しかしそのタイミングは人それぞれで、例えば矯正治療を行う予定のある方は、できるだけ早く受診していただく必要があります。 抜歯の必要性の有無、必要な場合はその時期を、歯科医院を受診して把握しておくことが大切です。

早めの抜歯のメリット

1 親知らず周辺の歯が虫歯にならなくて済む
2 痛みから解放される
3 かみ合わせや歯並びが悪くなるのを防げる
4 歯ブラシがしやすくなる

親知らずの抜歯に伴うリスクについて

下唇や顎の知覚を担う神経の障害

下の顎には、下顎管(かがくかん)という1本の管が存在しています。
この管の中には、下歯槽神経(かしそうしんけい)という、下唇や顎の先端部分であるオトガイの知覚を司る大切な神経が走行しています。

下顎の親知らずはこれに近接していることが多く、抜歯の際、傷つけてしまうリスクがあります。
下歯槽神経を損傷すると、歯茎の一部、下唇やオトガイの神経が麻痺することがあるため注意が必要です。

⼝腔内と上顎洞との交通による副⿐腔炎の併発

呼吸の際に空気が流れる道を「鼻腔(びくう)」といいます。
鼻腔の周囲には4つの空洞が存在しており、これらをまとめて「副鼻腔(ふくびくう)」と呼びます。

上顎の親知らずのすぐ上には「上顎洞(じょうがくどう)」という副鼻腔が存在しており、歯の根っこが上顎洞に突き出ていたり、根尖と上顎洞を隔てる骨が非常に薄い場合に、抜歯処置を施したりすると、副鼻腔と口がつながってしまい細菌や真菌などに感染し、副鼻腔炎の一種である「上顎洞炎」を引き起こしてしまうこともあります。

万が一このような症状が出た場合でも、適切に処置を行うことで空洞は塞がります。

妊娠のご予定があるもしくは、妊娠中の⽅の抜⻭

妊娠中だから歯科治療は受けられない、は完全な誤解です。
妊娠のステージによっては治療を延期したほうが良いということはありますが、その判断は必ず専門家が行うべきであり、口腔内に異常を感じているのにもかかわらず放置するというのは決して良い選択ではありません。
妊娠のステージと親知らず周囲の炎症の程度との比較で、今処置を行うべきか、処置は見合わせて投薬で逃げるかを医学的に判断します。
痛みを我慢していると、ストレスホルモンが分泌され、そのことはお腹の胎児にとって決して良いことではありません。
一度腫れたことがある、たまに歯茎が腫れることがある、ブラッシング時はいつも気になるなどの症状がある方はぜひご相談ください。

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