嚥下時に音が鳴るのは正常?正常な音と要注意な音を解説

食事を飲み込むとき(嚥下時)に音が鳴っており、気にしている人もいるかもしれません。

嚥下時に音が鳴るのは正常なのでしょうか。

また、この音が鳴っていたら注意したほうがいいものを知っておくことで、病気や注意するとよい症状を早期発見できるでしょう。

この記事では、嚥下時に音がなるのは正常なのか、正常な音と要注意な音を解説します。

食事は毎日する行為だからこそ、日々の健康や思わぬ病気の早期発見などに役立ててください。

嚥下時に音が鳴るのは正常?

嚥下時に音が鳴る違和感を感じて喉を押さえている女性の画像

嚥下時に音がなる場合があるかもしれませんが、「音が鳴る=どこかに異常がある」わけではありません。

聞こえた音によってはどこかに異常がある場合もありますが、「コ」と「ク」の澄んだ高い周波数成分を含み軽快なクイック音であれば正常な嚥下音です。

例えばコクッ・ゴクッ・コクン・ゴックンなどです。

特に多くの水を飲んだ際により大きく聞こえる場合があり、これは水を嚥下する際に多くの筋肉や神経に力が入るため音が聞こえます。

嚥下音を聞く「頚部聴診法」のやり方

聴診器の画像

嚥下音を聞くためには、嚥下時に耳を澄ませる方法もありますが、小さな嚥下音を聞き取るためには「頸部聴診法」を行ってみましょう。

頸部聴診法とは、頸部に聴診器を当てて嚥下音や嚥下前後の呼吸音を聴診するものです。

聴診器には模型とベル型があり、どちらでも頸部聴診法か可能ですが模型の方が音を聞きやすいです。

聴診器を当てて音を聞くため、小さな音も聞き逃す心配がありません。

それでは、頸部聴診法を行うメリットとデメリットを解説します。

頚部聴診法のメリット

頸部聴診法最大のメリットは、聴診器さえあればどこでも簡単に行える点です。

毎日の食事中に補聴器を頸部に当てることで、嚥下音の確認ができます。

嚥下障害など嚥下に関する異常を見つける検査は、X線による嚥下造影検査や内視鏡検査など設備の整った病院への受診が必要です。

病院での検査はより詳細な診断ができますが普段とは違う環境で慣れないことを行うため、緊張によって普段の状況が見えにくくなる場合があります。

しかし、頸部聴診法は普段の食事中にできるため、気持ち的にもリラックスできるでしょう。

また、補聴器を頸部に当てるだけなので、手術・切開・薬物投与などの負担が少ない点もメリットの1つです。

頚部聴診法のデメリット

頸部聴診法最大のデメリットは、造影検査や内視鏡検査など病院で行う検査と比べると精度が落ちる点です。

音を聞くだけで異常を正しく聞き分ける必要があり、視覚化できない分精度が落ちたり音を聞き分ける技術が必要だったりします。

そのため、頸部聴診法は日々の簡単な補助診断法として行い、食事中の様子などを加味して嚥下状態などを多角的に評価しましょう。

聞こえたら要注意!異常な嚥下音

男性とびっくりマークの画像

頸部聴診法を行った際に、ここで解説する9つの音の特徴に当てはまっていた場合、嚥下をする際に使用する器官などに不具合が起こっている場合があります。

もし、異常な嚥下音や似た音が聞こえた場合は、できるだけ早く耳鼻咽喉科・リハビリテーション科・神経内科・消化器内科・歯科・歯科口腔外科などを受診してください。

そこで造影検査や内視鏡検査などより精度の高い検査を行いましょう。

音がしない

正常な嚥下状態であれば、嚥下の振動音などなんらかの音がするはずなので、音がしない場合はどこかに異常がある可能性があります。

食べ物が食道の入口部分にある梨状窩に貯まったり、声帯よりも深い部分に入り込んでしまったりすると嚥下音が聞こえない場合が多いです。

嚥下音がしない場合、食物認知障害や送り込み障害かもしれません。

「ギュッ」と詰まったような音

「ギュッ」と詰まったような音が聞こえた場合、喉頭蓋反転不良による食道入口部通過障害の可能性があります。

通常は嚥下時に喉頭蓋が気道に蓋をして食べ物を食道へ誘導しますが、喉頭蓋の機能が低下すると食べ物がとおる際にギュッと詰まったような音が聞こえます。

食道入口部通過障害の場合は嚥下時だけではなく、口内に食べ物がなくてもギュッと詰まったような音が聞こえる場合もあるため、普段の様子も確認しておきましょう。

「ゴボッ」「カポン」と泡立つような音

「ゴボッ」「カポン」と泡立つような音が聞こえた場合、食べ物を嚥下する際の圧が漏れている可能性があります。

圧が漏れている場合、嚥下機能の低下が考えられ、嚥下障害になっていたり誤嚥のリスクが高くなっていたりするため対応が必要です。

泡立つような音ではなく、ゴボゴボと水に息を吹き込んだような音が聞こえる場合は咽頭残留や嚥下反射の遅れも考えられます。

「ギュー」と低周波で不明瞭な音

「ギュー」と低周波で不明瞭な音が聞こえた場合、咽頭残留や誤嚥の可能性があります。

先程解説した「ギュッ」と詰まったような音やほかの嚥下音と間違われやすいですが、低周波数成分で長く濁っている(不明瞭)な点が特徴です。

「ギュー」という音は誤嚥の可能性があり、誤嚥は高齢者の死因として多い誤嚥性肺炎につながる場合があるため注意してください。

「ゴゴゴっ」と連続した不明瞭な音

「ゴゴゴっ」と連続した不明瞭な音は、喉頭蓋の裏にあるくぼみに食べ物が残っている可能性があります。

喉頭蓋の裏にあるくぼみに食べ物が残ってしまうのは、嚥下力の低下や食道の開きが悪いなどがあります。

「ジュッジュッ」と嚥下とはずれたタイミングでの音

「ジュッジュッ」と嚥下とはずれたタイミングでの音がする場合、胃食道咽頭逆流の可能性があります。

胃食道咽頭逆流とは、胃の内容物が食道内へ逆流することによって引き起こされるさまざまな病態を指し、逆流性食道炎も胃食道咽頭逆流に含まれます。

嚥下音のあとに湿音や液体の振動音が聞こえる場合、誤嚥(食べ物などの侵入が声門を超えている)や喉頭侵入(食べ物などの侵入が声門を超えていない)かもしれません。

嚥下音が長い

嚥下音が長い場合は嚥下音持続時間延長ともいわれており、以下のような障害が原因で食べ物が咽頭を通過する時間がかかってしまう可能性があります。

食べ物が咽頭を通過する時間がかかってしまうのは、嚥下機能や筋力の低下が考えられます。

放置するとより嚥下機能や筋力の低下が起こる場合があります。

嚥下音が弱い

嚥下音が弱い場合は、「嚥下音が長い場合」と同じ障害により食べ物が咽頭を通過する時間がかかってしまう可能性があります。

また、嚥下音が弱い時には咽頭収縮が弱くなっている場合があり、嚥下力の低下で咽頭残留を招くことがあります。

嚥下する際に使用する咽頭収縮筋は、上咽頭収縮筋・中咽頭収縮筋・下咽頭収縮筋の3つ構成されており、とくに重要な役割を持っているのが下咽頭収縮筋です。

こちらは、食べ物の流入にともなって収縮し、食道入口の括約筋としての役割をになっています。

嚥下音が複数回聞こえる

正常な嚥下音はゴクッというように1回ですが、嚥下音が複数回聞こえる場合、嚥下障害や咽頭残留などさまざまな障害を引き起こしている可能性があります。

嚥下障害や咽頭残留以外に考えられる障害は以下のとおりです。

また、複数回の嚥下音のなかに呼吸音が混ざっている場合は誤嚥や咽頭侵入の可能性もあります。

通常嚥下する瞬間は誤嚥を防ぐため、気道がふさがるため無呼吸状態です。

しかし、呼吸音が聞こえれば気道が正しく塞がっていない状態のため誤嚥などがおこりやすくなります。

嚥下音から分かること

カルテに書き込んでいる医師の画像

以下の表では、嚥下音からわかる9つの障害と病気について解説します。

障害・病気嚥下音詳細
食物認知障害音がしない 聞き取りずらい・食べ物や食器の認識ができない、食べ方が分からない状態
・うつ状態などが理由で食事量が低下する場合も
・食べ物が正しく咽頭部へ送り込めない
食物送り込み障害音がしない 聞き取りずらい・喉から食道にかけて障害の可能性がある
・食べ物の逆流や気道への入り込む場合も
・嚥下に関係する筋肉や神経に障害がでて飲み込みにくさを感じる
嚥下反射遅延水泡音のような音 湿性音 (コボッ・カポン)・喉の感覚が鈍くなり嚥下運動が起こるまでに時間がかかる
・嚥下運動に時間がかかるため、誤嚥の原因にもなる
喉頭挙上不全嚥下音が弱い 複数回聞こえる・咽頭の収縮が不十分で食道の入口も開かない
・咽頭の閉鎖も不十分になり誤嚥しやすい
喉頭蓋反転不全詰まったような音 低周波成分が多い音 (ギュッ・ゴゴゴ)・嚥下の瞬間に気道を塞ぐ喉頭蓋の動きが不十分になる
・気道の閉鎖機能の低下
食道入口部通過障害詰まったような音 (ギュッ)・上部食道括約筋の緩みが不十分
・食道に入りきれなかった食べ物が気道へ侵入する場合も
誤嚥・食べ物や唾液などが気道に入ってしまう
・食べ物などが気管に入り炎症を起こすと誤嚥性肺炎にもつながる
咽頭残留水泡音のような音 湿性音 (コボッ・カポン)・嚥下後も咽頭に食べ物が残っている状態
・むせて残った食べ物を排出しようとする
・むせる状態を放置すると肺炎につながる場合も
咽頭逆流症嚥下とはずれたタイミングの音 (ジュッジュッ)・胃酸など胃の内容物が咽頭まで及んだ状態
・逆流性食道炎と同じ括りの病気でより逆流の範囲が上

日常的に嚥下音を聞いておくことで、嚥下障害などのさまざまな障害や病気などの異変に気付ける機会が増えるでしょう。

まとめ

この記事では、嚥下時に音がなるのは正常なのか、正常な音と要注意な音を解説しました。

嚥下音は正常な場合でも鳴り、「音が鳴る=どこかに異常がある」わけではありません。

「コ」と「ク」の澄んだ高い周波数成分を含み軽快なクイック音であれば正常な嚥下音です。

嚥下音は耳をすませば聞こえる場合もありますが、小さい嚥下音も聞き逃さずより鮮明に聞くためには聴診器を使用した頸部聴診法がおすすめです。

頸部に聴診器を当てて嚥下音を聞くことで小さな音も聞き逃さず簡単に嚥下音を聞けます。

ただ、病院で行う検査と比べると精度が落ちてしまい、異常な嚥下音を聞き分ける技術が必要です。

岡崎歯科』では、「すべての人に必要な医療を」の考えのもと、さまざまな患者様が治療を受けられる環境を目指しています。

嚥下障害や嚥下音に不安がある人はぜひ一度ご相談ください。

岡崎歯科』では、通院が難しい人のために訪問歯科も行っています。

歯科医師がご自宅まで訪問させていただくことで、さまざまな口腔状況の改善が可能です。

歯科医院での口腔内のケアや訪問歯科に興味がある方は、ぜひ『岡崎歯科』までお気軽にお問い合わせください。

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