咀嚼と嚥下の違いとは?起こる問題や食事の注意点を解説

咀嚼と嚥下はどちらも食事をする際の動作を指す言葉で、それぞれの段階で起こる可能性がある障害、それに対するリハビリや治療法があります。

咀嚼や嚥下で起こる問題を放置すると、誤嚥性肺炎や窒息など命に関わる問題につながってしまうかもしれません。

この記事では、咀嚼と嚥下の違いと起こる問題、食事をする際の注意点について紹介します。

嚥下と咀嚼の違いを知りたい人、起こる問題や注意点を知りたい人はぜひ最後までご覧ください。

咀嚼と嚥下の違い

喉元をおさえる高齢男性

まずは、咀嚼と嚥下の違いについて紹介しますが、「咀嚼」と「嚥下」はどちらも食事をする際の動作です。

それでは、「咀嚼」と「嚥下」それぞれの運動について解説します。

咀嚼とは「半自動運動」

咀嚼とは、「食べ物を嚙み千切る・すり潰して小さくする・唾液と混ぜる」一連の動作をする「半自動運動」に分類されます。

半自動運動とは、運動(動作)の始まりと終わりをコントロールできるもので、一定のリズムを持った周期運動で、咀嚼以外の半自動運動には歩行や呼吸などがあります。

食べ物が何も入っていない状態で咀嚼運動を続けることは難しく、咀嚼運動を持続させるためには口のなかに食べ物が入っている感覚が大切です。

口のなかに食べ物が入った物理的刺激が中枢に伝達されることで、周期的な咀嚼運動が可能になります。

嚥下とは「反射運動」

嚥下とは、咀嚼して柔らかくなった食べ物を咽頭や食道に送り込む動作を指す「反射運動」です。

反射運動であるため、自分の意思とは関係なく身体が勝手に動きます。

嚥下する際には、「食べ物を舌で咽頭へ送る・咽頭が引き上げられ咽頭口が塞がる・食道内の蠕動運動で食べ物を胃に送る」の大きく3つの動きが必要です。

私たちはこれらすべての動きを意識的に行っているわけではなく、反射で行っています。

嚥下以外の反射運動としては体温が上がると汗が出る、暗い所で瞳孔が開くなどがあります。

咀嚼障害について

高齢男性の口元にスプーンを運ぶ医療従事者の女性

咀嚼障害とは、歯や舌など咀嚼に関する器官の欠損や筋力低下により起こる障害です。

それでは、咀嚼障害になる原因とリハビリや治療方法について解説します。

原因

咀嚼障害の原因はおもに器質性咀嚼障害と運動障害性咀嚼障害の2つに分けられます。

器質性咀嚼障害は、歯などの咀嚼に関する器官の欠損が原因で起こる咀嚼障害です。

一方で運動障害性咀嚼障害は、咀嚼に関する口腔諸器官の動き(運動)が困難になって起こる咀嚼障害で、加齢や脳血管疾患、神経筋疾患などが原因で起こります。

リハビリや治療方法

リハビリや治療方法は、器質性咀嚼障害なのか運動障害性咀嚼障害によって異なります。

器質性咀嚼障害の場合は、まず治療を受けて歯など咀嚼に関する器官の欠損を補いましょう。

この場合、歯が抜けている、歯が欠けている、義歯が合っていないなどが当てはまる可能性が高いです。

運動障害性咀嚼障害の場合は、リハビリでの筋力低下防止などが有効です。

たとえば、舌や頬のストレッチで口の動きをしなやかにしたり、舌の出し入れや頬を膨らませたりして舌や頬の動きをなめらかにしましょう。

嚥下障害について

どんぶりの前で胸を押さえて苦しそうな高齢女性と背中をさする医療従事者の女性

嚥下障害とは、食べ物をうまく食べられない、飲み物をうまく飲みこめない状態です。

それでは、嚥下障害になる原因とリハビリや治療方法について解説します。

原因

嚥下障害の原因は、高齢者の場合は筋力低下、高齢者だけではなく若い人も含む場合は脳梗塞などの脳血管疾患が挙げられます。

筋力の低下は、咀嚼障害にもつながる部分であり、十分に細かく柔らかくなっていない食べ物は嚥下が難しくなるでしょう。

また、のど仏は嚥下する際に上にせりあがることで気道が塞がり誤嚥を防ぐ効果がありますが、筋力が低下し、のど仏の位置が下がってしまうと十分にせりあがらず気道がきちんと塞がらないことで誤嚥が起こりやすいです。

一方で、脳血管疾患が原因の場合は、脳の中枢や神経回路がダメージを負ってしまい、嚥下反射がうまく働かなくなります。

リハビリや治療方法

嚥下障害にはリハビリを行い、機能低下の予防や回復を目指す場合が多いです。

リハビリの内容としては、口やのどの筋力を鍛える間接訓練・ゼリーなどを使用し飲みこむ練習をする直接訓練・実際の食事を食べる練習する摂食訓練があります。

本人の嚥下レベルにあわせて、医師や歯科医師の指導のもと、安全にリハビリを進めましょう。

リハビリで嚥下障害の改善が難しいと判断された場合、嚥下機能改善手術や誤嚥防止手術などを行う場合があります。

嚥下機能改善手術は、誤嚥を減らすための手術で術後にはリハビリを行い、嚥下機能の回復を狙います。

一方で誤嚥防止術は、誤嚥防止のために食道と気道を分離する手術です。

食道と気道を分離するため発声機能が失われる可能性があり、手術の実施には慎重な決断が必要です。

咀嚼・嚥下障害が原因となる問題

びっくりマークと虫眼鏡の画像

咀嚼・嚥下障害は放置するとさまざまな問題が起こります。

なかには、健康被害だけではなく命に関わる問題もあるため、決して放置しないでください。

ここでは、咀嚼・嚥下障害が原因となる問題を6つ解説します。

誤嚥性肺炎

咀嚼・嚥下障害の問題として、よく耳にするのが誤嚥性肺炎でしょう。

誤嚥性肺炎とは、食べ物や唾液、細菌が気道に入ってしまい起きる肺炎の一種です。

通常は、食べ物などが気道に入っても咳き込んで排出できますが、高齢者など筋力が低下している状態では咳き込んでも食べ物などを排出できず肺炎につながります。

肺炎のなかでも誤嚥性肺炎は高齢者に多い死因として有名で、厚生労働省の調査によると、2022年度日本人の死因6位となっています。

窒息

窒息は食べ物や飲み物、唾液などが気道を塞いでしまい、息ができなくなる状態です。

嚥下する筋力が低下したり、嚥下する際に気道を蓋する役割がある喉頭蓋の動きが不十分な場合に起こる場合があります。

食べ物などが詰まり窒息状態になった場合は、肩甲骨の間を手平の付け根で叩いたり腹部突き上げ法で詰まったものを吐き出せるように促したりしましょう。

食べた物を吐き出せない、吐き出せても意識がない場合は命に関わる可能性が高いためすぐに救急車を呼んでください。

低栄養

嚥下・咀嚼障害になり、食事量が減ったり食べられる食事の形が限定されたりすると低栄養状態になる場合があります。

低栄養状態が長引けば、免疫力・体力・筋力が低下してしまい、筋力の低下がより一層嚥下・咀嚼障害を悪化させる悪循環につながります。

また、体力の低下は今までできた動きができなくなり、生活の質の低下にもつながるでしょう。

脱水

人は汗や唾液、尿などで常に水分が失われている状態です。

そのため、飲み物だけではなく食事に含まれる水分も含め2L程度、最低でも1Lの摂取が推奨されています。

ただ、嚥下・咀嚼障害によってうまく飲み込めない状態になると、水分は失われているのに十分な水分補給ができず脱水につながる場合があります。

脱水が軽度であれば、唾液量減少による口内環境の悪化や肌の張りが失われるでしょう。

重度の脱水状態になれば血圧の低下によりふらつきや失神、重度の脱水が続けば腎臓・肝臓・脳などに重度の損傷が生じ、命に関わります。

咽頭残留

通常は嚥下すると咽頭には食べ物がなくなっているものですが、嚥下しても咽頭に食べ物が残る場合を咽頭残留と呼びます。

咽頭残留が次の嚥下のタイミングで気道に入ってしまったり、違和感が生じて咳き込んでしまう場合があります。

口内環境悪化の原因でもあり、口臭や歯周病などを引き起こす可能性も否定できません。

咽頭残留を防ぐためには、嚥下機能の改善だけではなく食後の口腔ケアも効果的です。

楽しみの喪失

食事は生きるために必要なことですが、同時に「今日の夕飯は〇〇を食べよう」「おやつには甘いものを」と毎日の楽しみとなっていることも多いです。

咀嚼・嚥下障害になり、好きなものを自由に食べれなくなると、楽しみが喪失してしまいます。

咀嚼・嚥下機能を少しでも改善するためにリハビリなどを行うことも大切ですが、機能回復には限界があります。

そのため、「食べる」ことが苦痛にならないように、安全に楽しく食べられるような咀嚼・嚥下レベルにあった食事の提供を行うようにしましょう。

咀嚼・嚥下障害の人が食事をする際の注意点

注意点と書かれた木製ブロックの画像

咀嚼・嚥下障害の人が食事をする際には、以下の6点に注意しましょう。

この注意点に気を付けながら日々の食事介助を行うことで、咀嚼・嚥下障害による誤嚥や窒息などのリスクを低くすることができます。

また、突然口に食べ物を入れられると誰であっても驚き、むせやすくなるため、すべての動作に置いて必ず声掛けをしてから行うことを意識しましょう。

まとめ

この記事では、咀嚼と嚥下の違いと起きる問題、食事をする際の注意点について紹介しました。

咀嚼は「食べ物を嚙み千切る・すり潰して小さくする・唾液と混ぜる」一連の動作をさし、嚥下は咀嚼して柔らかくなった食べ物を咽頭や食道に送り込む動作です。

咀嚼・嚥下障害が原因となる問題は、誤嚥性肺炎や窒息、低栄養、脱水などさまざまあり、命に関わる問題もあるため放置できません。

間接訓練や直接訓練で咀嚼・嚥下機能の改善をはかり、改善が見込めない場合は治療や手術を受けることを検討しましょう。

岡崎歯科』では、「すべての人に必要な医療を」の考えのもと、さまざまな患者様が治療を受けられる環境を目指しています。

咀嚼・嚥下機能改善や口腔内ケアをしたいと考えている方は、定期的な歯科医院でのケアも非常に重要です。

また、『岡崎歯科』では、歯科医院に通院するのが難しい方でも安心して口腔治療を受けられるように訪問歯科も行っています。

歯科医師がご自宅まで訪問させていただくことで、口腔内のさまざまな状況を改善できます。

歯科医院での口腔内のケアや訪問歯科に興味がある方は、ぜひ『岡崎歯科』までお気軽にお問い合わせください。

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