摂食・嚥下障害に口腔ケアは有効?訪問歯科のメリット・デメリットも解説
摂食・嚥下障害とは、食べ物の咀嚼や嚥下ができなくなったり、難しくなったりする状態のことです。
そんな摂食・嚥下障害の予防や悪化防止には、口腔ケアが重要です。
しかし、歯科診療を受けたいと思っても、健康状態などによっては来院して診療を受けることが難しい場合もあるでしょう。
そんなときは「訪問歯科」の利用がおすすめです。訪問歯科を利用すれば、自宅に居ながら歯科医師からの歯科診療や口腔ケア、嚥下訓練などが受けられます。
この記事では、摂食・嚥下障害で起こる問題や原因、口腔ケアは有効なのかについて解説します。
摂食・嚥下障害で起こる問題

摂食・嚥下障害とは、食べたり飲んだりがうまくできないまたはできない状態です。
摂食・嚥下障害になると以下のようなさまざまなトラブルを引き起こす恐れがあります。
誤嚥性肺炎 | ・食べ物や唾液、細菌などが気道に入り起こる肺炎の一種 ・肺炎のなかでも高齢者に多い死因として有名 ・2022年度日本人の死因6位 |
窒息 | ・食べ物や飲み物などが気道を塞いでしまい息ができなくなる状態 ・嚥下する筋力が低下したり咽頭蓋の動きが不十分になったりすると起きやすい |
低栄養 | ・食事量が減ったり食事の形が限定されたりすると低栄養状態になりやすい ・低栄養が続けば免疫力・体力・筋力の低下にもつながる ・体力や筋力の低下は生活の質の低下にもつながる |
脱水 | ・水分をうまく飲み込めない状態が続くと脱水状態になる ・軽度の脱水で血圧低下によるふらつきや失神が起きる ・重度の脱水が続けば腎臓・肝臓・脳などに重度の損傷が生じる場合も |
咽頭残留 | ・嚥下しても咽頭に食べ物などが残ってしまっている状態 ・次の嚥下のタイミングで気道に入って咳き込んでしまう可能性も ・口内環境の悪化で口臭や歯周病などを引き起こす場合も |
楽しみの喪失 (QOLの低下) | ・食事が日々の楽しみになっている場合、食事ができないのは楽しみの喪失につながる ・楽しみの喪失は認知症の悪化やうつ病の発症などにつながる場合も |
摂食・嚥下障害を放置すると、命に関わる問題につながることがあります。
摂食・嚥下障害の原因

摂食・嚥下障害になる原因はいくつかあります。
ここでは、摂食・嚥下障害の原因としてよく挙げられる2つの原因について解説します。
脳血管疾患やがんなどの病気
まずは、脳血管疾患やがんなどの病気です。
脳血管疾患とは、脳卒中や脳梗塞など脳の血管にトラブルが起きることで、脳細胞が破壊される病気の総称です。
特に脳卒中の症状には運動障害や知覚障害、失調などがあり、摂食・嚥下に関わる感覚に関しても影響を受ける可能性が高くなっています。
また、舌がんや咽頭がんなど口腔内に腫瘍ができた場合、腫瘍が邪魔をしてうまく食べ物を飲み込めなくなる場合があります。
加齢による筋力や反射の衰え
加齢によって摂食・嚥下に関係する筋力や反射が衰えることも摂食・嚥下障害の原因になります。
食べ物が咽頭を通過するのは0.5秒以内とごく短い時間です。
このわずかなタイミングにあわせて無呼吸状態をつくったり気道を塞ぎ食道の入口を広げたり複雑な動きが行われます。
そのため、筋力や反射が衰えることで摂食・嚥下障害になり、タイミングが合わず誤嚥につながってしまいます。
摂食・嚥下障害の予防や対策には口腔ケアが重要

口腔ケアは摂食・嚥下障害に有効な予防や対策手段です。
そもそも口腔ケアとは、口のなか(口腔内)のお手入れを指し、食後のうがいや歯磨きも口腔ケアの1つです。
口腔ケアを行うことで、口腔内を清潔に保つだけではなく歯・歯肉・口腔粘膜のマッサージにもなるため、機械的な刺激によって口腔機能の改善が期待できます。
口腔ケアには、日常的に家庭でできる口腔ケアと訪問歯科などで受けられる専門的な口腔ケアがあります。
それぞれの口腔ケアの内容について解説します。
家庭でできる口腔ケア
意識はないかもしれませんが、日々おこなっている歯磨きなども口腔ケアに含まれます。
家庭でできるおもな口腔ケアの方法を3つ紹介します。
口腔内の点検と清掃 | ・摂食・嚥下障害の人の場合頬・唇・歯茎などの間に食べかすが残っている場合があるため取り除く ・指に巻いたガーゼや口腔内用スポンジブラシなどを使用し口内を傷つけないように注意する |
歯磨き | ・ブラシ部分が小さめの歯ブラシを使用して小刻みに動かしながら汚れを取る ・歯だけではなく歯茎などもしっかりと磨く ・ブラシ部分の水はよくきって誤嚥しないように注意する ・口内粘膜が弱い場合はソフトナイロン製の歯ブラシなど素材にも気を付ける |
口磨き | ・ガーゼや口腔ケア用スポンジブラシを使用 ・水で濡らし、誤嚥しないように水分をきってから頬・唇・歯茎の間などをふき取る ・舌についた汚れもしっかりと拭き取る |
摂食・嚥下障害がなく、健康な状態であればうがいや歯磨きで口内は十分清潔に保てるかもしれません。
しかし、筋力などが低下し摂食・嚥下障害になっている人は、うがいでむせてしまったり、歯磨きだけでは口内の食べかすなどを十分に清掃できなかったりする可能性があります。
訪問歯科などで受けられる口腔ケア
家庭で行う日常的な口腔ケアだけでは全ての汚れを取れるわけではないため、定期的に訪問歯科などを利用して専門的な目線からも口腔ケアを行うのがおすすめです。
訪問歯科などで受けられる口腔ケアは、器質的口腔ケアと機能的口腔ケアの2つに分かれています。
器質的口腔ケアとは、口のなかを清潔に保つために行うケアのことです。家庭の口腔ケアでは取り除ききれなかった、歯や口内粘膜の汚れを取り除きます。
また、普段摂食・嚥下障害の人へ口腔ケアを行っている人に対して、口腔ケアの方法や口内の清潔を保つためのアドバイスも受けられます。
機能的口腔ケアとは、口内の筋力改善などを目指してリハビリなどを行うことです。摂食・嚥下機能の回復のためのリハビリやトレーニングを実践します。
口腔ケアをおろそかにするリスク

摂食・嚥下障害の予防や対策に有効な口腔ケアですが、おろそかにすると摂食・嚥下障害が悪化するだけではないリスクが存在します。
ここでは、口腔ケアをおろそかにするリスクを2つ解説します。
口内環境の悪化
口腔ケアをおろそかにすると、口内に食べかすなどが溜まってしまい口内環境の悪化につながります。
特に高齢者になると、口内洗浄の役割もある唾液の分泌機能も低下するため、より口内環境の悪化が起こりやすいです。
また、虫歯や歯周病などの病気にもかかる場合があり、今以上に咀嚼や嚥下などが難しくなり摂食・嚥下障害が悪化する可能性があります。
健康状態の悪化
一見関係がないように感じるかもしれませんが、口内環境の悪化は健康状態の悪化にもつながります。
特に、誤嚥性肺炎のリスクが高まる点に注意が必要です。口内環境が悪く細菌が多いと、誤嚥してしまった際に誤嚥性肺炎を引き起こすリスクが高くなります。
また、「歯で噛む」行為は脳の活性化につながりますが、口内が不衛生になり虫歯などで歯がなくなると、脳に刺激が伝わらず脳が活性化されないため認知症発症リスクが高くなります。
それだけではなく、歯周病菌は血管・呼吸器・消化器などに侵入し、糖尿病・心臓病、脳梗塞などの病気を招くこともあります。
このように、一見関係がない口内環境の悪化と健康状態ですが、実は密接な関係があり、健康でいるためにも口腔ケアは欠かせません。
口腔ケアを訪問歯科でお願いするメリットとデメリット

ここでは、口腔ケアを訪問歯科でお願いするメリットとデメリットを解説します。
メリット
口腔ケアを訪問歯科でお願いする最大のメリットは、歯科医院へ来院せず口腔ケアが受けられる点です。
介護が必要な人や体力や免疫力が低下し通院が難しい人のなかには、「口腔ケアを受けたいけど病院に行けない」と悩んでいる人もいます。
訪問歯科を利用すれば、自宅に居ながら歯科医師による専門的な口腔ケアが受けられたり、日常的な口腔ケアに関するアドバイスをもらえたりします。
その他、入れ歯の作製や調整、口腔機能のリハビリテーションなどお悩みや状態に合ったケアを受けられます。
デメリット
口腔ケアを訪問歯科でお願いするデメリットは、治療内容に制限がある点と治療費が割高になる点の2つです。
訪問歯科は、スタッフが器材などを持参し治療を行います。
持ち運びができるような器材であれば問題ありませんが、大きな器材や専門機器が必要となる治療は訪問歯科では対応できない可能性があります。
また、訪問歯科も保険適用で治療ができますが、通常の治療費に加えて指導料や交通費、出張費などが必要になることも多いです。
特に歯科医院から自宅が16Km以上離れている場合は、保険適用外になり自費になってしまうこともあるため注意が必要です。
摂食・嚥下障害の訪問歯科治療の流れ

摂食・嚥下障害の訪問歯科治療の流れは以下のとおりです。
- 問診
まずは、自覚している症状や困っていること、食事の様子、治療方針の希望などをヒアリングします。 - 口腔や嚥下機能の評価・検査
歯科検診・歯周病検査・内視鏡検査など必要な検査などを行い、今後の治療計画などを立てます。 - カウンセリング
検査の結果や必要となる治療について説明し、患者様と一緒に治療内容や治療計画を決定していきます。 - 治療開始
患者様の納得できる治療計画が決まれば実際に治療を開始します。
治療だけではなく、日々の食事に関するアドバイスや摂食・嚥下に関するリハビリも実施し、摂食・嚥下障害の改善を目指します。
まとめ
訪問歯科は通院が難しい方でも自宅で歯科診療や口腔ケア、摂食・嚥下障害のリハビリなどを受けられる点がメリットです。
口腔ケアは摂食・嚥下障害に有効な予防や対策手段の1つで、お口の状態を健康的に維持しつつ、機械的な刺激によって口腔機能の改善が期待できます。
さまざまな患者様が治療を受けられる環境を目指す『岡崎歯科』では、訪問歯科も行っています。
歯科医院に通院するのが難しい方でも、歯科医師がご自宅まで訪問させていただくことで、口腔内のさまざまな状況を改善できます。
歯科医院での口腔内のケアや訪問歯科に興味がある方は、ぜひ『岡崎歯科』までお気軽にお問い合わせください。
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