誤嚥性肺炎とは?原因・症状・予防方法など詳しく紹介
75歳以上の高齢者に多い病気である『誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)』は、口腔内が清潔に保たれていないことなどが原因で生じる病気です。
風邪のような症状が出ることに加え、ボーっとしてしまう・食事に時間がかかるなど、特有の症状が見られるのが特徴となります。
この記事では、誤嚥性肺炎の原因・症状・治療法・予防法を詳しく紹介します。
誤嚥性肺炎の疑いがあり心配な方、発症しないように備えたい方は、ぜひご参考ください。
誤嚥性肺炎とは

食べ物・飲み物・唾などを飲み込む機能を嚥下(えんげ)と言いますが、本来口から食道に入るべき物が気管に入ってしまうことを誤嚥(ごえん)と言います。
通常は、食べ物や飲み物が誤って気管に入った場合は、咳反射によって気管から排出されますが、咳反射が鈍っていることで気管支や肺に悪影響を及ぼすのが誤嚥性肺炎です。
高齢者や寝たきりの方は、口腔内が清潔に保たれていないことが多く、誤嚥が起こったときに口腔内の細菌も一緒に気管支や肺に送り込まれてしまい、肺炎を発症します。
誤嚥性肺炎の原因

高齢者が発症する肺炎の多くを占める誤嚥性肺炎は、さまざまな原因が重なり合って発症します。
ここからは、誤嚥性肺炎の原因を詳しく紹介します。
口腔内の衛生状況
口腔内には常に多くの細菌がいますが、口腔内の衛生状況が悪い場合、さらに歯垢が増えたり、カンジダ菌が検出されたりすることもあります。
そうなると、口腔内の細菌が唾液や食べ物と一緒に肺や気管支に入り込むことになり、誤嚥性肺炎を発症してしまいます。
また、高齢者は唾液の量が減り口腔内が乾燥することも、細菌を増やすリスクを増大させると考えられ、口腔内を清潔に保つとともに唾液量を減少させないことも必要です。
嚥下障害
食べ物や飲み物、唾などを自然に食道へ送り込めなくなり、嚥下がうまくできないことを誤嚥と言いますが、誤嚥を日常的に繰り返すことは、誤嚥性肺炎を引き起こす原因となります。
食事中によくむせる、咳込むなどの他にも、痰が多く出るなどの症状も嚥下障害のサインとなるため、見逃さないようにしましょう。
ただし、むせたり咳込んだりする症状が見られない場合や、就寝中に誤嚥が起こることもあるため、痰が増えるなどの症状が少しでも見られたら注意が必要です。
加齢による免疫力の低下
誤嚥によって気管支や肺に菌が送られてしまっても、免疫力があれば問題ありませんが、病気や加齢によって免疫力が低下していると誤嚥性肺炎を発症してしまいます。
通常、自己免疫力によって細菌やウイルスなどの微生物は攻撃されますが、免疫機能は加齢に伴って老化するとされていて、若い頃と同じように働かなくなっていきます。
よく風邪を引くようになったなど、免疫力が低下しているサインが見られたら、注意が必要です。
加齢による咳反射の低下
通常は、気管に刺激物質が入り込むと異物を排出しようとする生体防御反応として咳反射が起こりますが、加齢によって咳反射機能が低下すると、そのまま気管支や肺に異物が流れ込んでしまいます。
咳反射は、気道内の刺激が脳の咳中枢に伝わることで指令が送られ、咳によって異物を排出させる働きですが、加齢とともに指令がうまく送られなくなっていきます。
そのため、誤嚥をしても咳が出ない、むせないなど危険性が高く、気付かないうちに誤嚥性肺炎を発症するケースも珍しくありません。
誤嚥性肺炎の症状

誤嚥性肺炎は、原因によって引き起こされることがわかりましたが、どのような症状が出たら注意が必要なのでしょうか?
ここからは、誤嚥性肺炎の代表的な症状を紹介します。
初期は風邪と似た症状が出る
誤嚥性肺炎の初期は、以下のような症状が現れます。
- 激しい咳
- 濃い痰(黄色い痰)
- 熱
- 肺の雑音
このように、風邪の症状と似ていることや、高齢者に現れやすい症状であることから、誤診されることも多いですが、明らかに嚥下機能が低下していたり、繰り返し咳が出たりする場合は注意が必要です。
風邪症状以外の特有の症状
誤嚥性肺炎は、風邪症状以外にも以下のような症状が現れることがあります。
- ぼんやりしている
- 元気がない
- 夜中に咳込む
- 体重減少
- 食事がなかなか終わらない
このような症状だけが現れることもあり、咳や熱が出ない場合もあるため、家族や周囲の人が注意して普段との変化に気を配る必要があるでしょう。
また、こうした風邪以外の症状のみが現れることを『不顕性誤嚥(ふけんせいごえん)』と呼び、一般的な誤嚥の症状が見られない場合もあるため、無意識のうちに病状が進行してしまう前に、かかりつけ医に相談することをおすすめします。
誤嚥性肺炎の治療方法

誤嚥性肺炎と診断されたら、主な治療は抗菌薬を用いた薬物療法です。
抗菌薬によって肺炎を治すことは可能ですが、誤嚥を防げるわけではないため、治療後は嚥下機能を向上させることや、口腔ケアを怠らないなど、再発を防ぐよう気を付ける必要があります。
誤嚥性肺炎の予防方法

誤嚥性肺炎を防ぐためには、肺炎の治療をする以外に日常生活でできる予防に気を配る必要があります。
ここからは、誤嚥性肺炎の予防方法について紹介します。
口腔内を清潔に保つ
高齢者の口腔内が清潔に保たれない理由として、唾液の出る量が少ないこと・義歯を含めた歯磨きが不十分になることなどが挙げられます。
口腔内に常にいる細菌を増やさないようにするためには、食事の後の歯磨きを徹底するだけではなく、起床後に口をすすぐことや、義歯をしっかり外して丁寧に洗うことが必要です。
さらに、定期的に歯科医院で検診を受け、必要であればクリーニングをするなど、口腔内を清潔に保つようにしましょう。
歯科医院に通うのが難しい方は、訪問歯科を行っている歯科医院で相談し、訪問してもらうのも一つの手段です。
口腔内が清潔に保たれていないと、他の対策をしても誤嚥性肺炎を発症するリスクが高まるため、本人だけではなく周りのサポートも必要となるでしょう。
当院の訪問歯科についてはコチラのページをご覧ください。
飲み込む力をつける
飲み込む力は、脚の筋肉などを鍛えるのと同様に、トレーニングによって咀嚼・嚥下の基礎力を鍛えられます。
大事なのは、食べ物を噛む力・口の奥へ送り込む力・唾液を出す力・食道に送り込む力などです。
さまざまな方法で飲み込む力を鍛えられますが、ここでは新宿区が推奨しているごっくん体操を紹介します。
歌と体操を取り入れることで、飲み込む力をつけ嚥下障害を予防しましょう。
食べ方などを工夫する
誤嚥性肺炎を防ぐためには、食べ物にとろみをつけたり、飲み込みやすい形にするなどの工夫をすることも効果的です。
さらに、あごを引いて椅子に深く腰掛けるなど、食べ方の工夫をするだけで、誤嚥しにくい環境を整えられるでしょう。
反対に、飲み込みにくい大きさの食べ物を食べたり、背中を丸くして食べたりすることは、誤嚥につながりやすいため注意が必要です。
また、食事の介助が必要な方の場合、介護者が座って同じ目線になることであごを引くようにしたり、飲み込んだことをしっかり確認してから次の一口を差出したりと、誤嚥を防ぐ工夫をしてみましょう。
免疫力を高める工夫をする
前述したように、万が一肺や気管支に菌が入り込んでも、免疫機能がしっかり働けば入り込んだ異物を除去できます。
そのため、日頃から免疫力を高める工夫をすることが重要です。
バランスの良い食事を心がけることに加え、程よい運動をして体を動かしたり、ストレスを溜めずに十分休息したりすることも大事です。
免疫力を高められる食材としては、以下のようなものがおすすめです。
- 発酵食品……善玉菌によって腸内環境を整える
- きのこ類……食物繊維・ビタミン・ミネラルが豊富
腸内環境を整えることは、免疫力をアップすることにつながるとされているため、これらの食材をうまく取り入れるとともに、その他の栄養素もバランスよく摂取することをおすすめします。
むせやすい食材を避ける
日頃からむせやすい食材を避けて食事をすることも重要です。
例えば、水やお茶などのさらさらした液体や、味噌汁などの液体と固体が混ざっている料理、ぱさぱさしたいも類などはむせやすい食材とされるため、注意しましょう。
前述したように、とろみをつけて食べるようにするなど、工夫することでむせやすい食材もおいしく食べられます。
水やお茶、味噌汁などを避けるのは難しい場合もありますが、むせやすい物であることを理解したうえで、注意して飲み込むなどの配慮が必要となるでしょう。
まとめ
誤嚥性肺炎は、高齢者に多い病気で加齢によって起こるさまざまな原因が重なることで発症します。
自分でケアできる方、介護が必要な方など状況によってやり方は変わってきますが、できるケアは同じで、口腔内を清潔に保つことや免疫力を高めること、誤嚥を防ぐようにすることなどが重要です。
病気の危険性や原因を把握し、予防策を実行してみましょう。
『岡崎歯科』では、「すべての人に必要な医療を」の考えのもと、さまざまな患者様が治療を受けられる環境を目指しています。
誤嚥性肺炎の予防のために口腔内ケアをしたいと考えている方は、定期的な歯科医院でのケアも非常に重要です。
また、『岡崎歯科』では訪問歯科も行っています。
歯科医院に通院するのが難しい方でも、歯科医師がご自宅まで訪問させていただくことで、誤嚥性肺炎だけではなく口腔内のさまざまな状況を改善できます。
歯科医院での口腔内のケアや訪問歯科に興味がある方は、ぜひ『岡崎歯科』までお気軽にお問い合わせください。
#誤嚥性肺炎