誤嚥性肺炎は放置するとどうなる?進行の危険性と発症リスクを下げる方法を解説
高齢者や特定の疾患を持つ方の発症リスクが高い誤嚥性肺炎は、初期症状が風邪に似ているため、「大したことはないだろう」と思って放置してしまうことも多いようです。
しかし、誤嚥性肺炎の放置は健康に重大な悪影響をおよぼすだけではなく、時として生命に関わる深刻な病気として扱われています。
誤嚥性肺炎を放置するとどのようなリスクが発生するのか、発症リスクを下げるためにはどのような予防方法が効果的なのかなど、発症リスクが高い方やご家族は知っておいたほうが予防に努めやすくなるでしょう。
この記事では、誤嚥性肺炎を放置してはいけない理由や、日常生活で継続的に取り入れやすい予防法などについて詳しく紹介します。
誤嚥性肺炎を放置するとどうなる?

誤嚥性肺炎は適切な治療をしないまま放置すると進行し、想像以上に重篤な症状になってしまうことがあります。ここでは、誤嚥性肺炎を放置した際に考えられる状態について紹介します。
誤嚥性肺炎の初期症状と進行にともなう変化
誤嚥性肺炎の初期症状としては、咳や喉の違和感、発熱などがありますが、こういった症状は風邪やインフルエンザと似ているため、見過ごされることが少なくありません。
しかしそのまま放置して進行すると、呼吸困難や胸痛、疲労感が強くなり、食欲不振や体重減少といった症状が現れます。
進行や症状は感染の程度や個人の健康状態によって異なりますが、初期や軽度の場合は自覚症状が少なく、前述の通り風邪の初期症状にも似ているため、発見が遅れる恐れがあります。
7日以上の咳や微熱が続く場合は、誤嚥性肺炎を疑い、医療機関での検査を受けましょう。
症状が進むと炎症や合併症の可能性がある
誤嚥性肺炎をさらに放置すると、炎症が進行し、重篤な合併症を引き起こす可能性があります。例えば以下のような状態は非常に危険です。
- 肺の機能低下による呼吸困難・酸素不足
- 肺組織の損傷
- 敗血症
- 多臓器不全
このような症状は命に関わるため、早急な発見と適切な治療が必要です。
重篤な誤嚥性肺炎は、高齢者にとって非常に危険です。肺の機能が低下することによって酸素の供給が不十分になり、全身の臓器に悪影響を及ぼします。
特に、もともと心臓や腎臓に既往症がある場合、これらの臓器の機能も低下し、全身状態が悪化します。
ここまでの状態になればほぼ確実に入院が勧められますが、その期間は長くなるでしょう。
しかし高齢者の場合、入院が長引くと筋力や認知機能が低下するリスクもあり、回復がさらに難しくなるケースが考えられます。
そのような事態を回避するためにも、誤嚥性肺炎は早期に発見し、適切な治療が必要になるでしょう。
誤嚥性肺炎の発症リスクに注意するべき人とは
誤嚥性肺炎は高齢者に多い病気ですが、必ずしも高齢者のみがかかるわけではなく、嚥下機能が低下した方であれば誰でもかかる可能性があります。以下は発症リスクが高くなる方の特徴です。
- 口腔内の衛生状態が悪い高齢者
- 嚥下機能が低下している方
- パーキンソン病患者
- 脳梗塞の病歴がある方
高齢者や特定の病気を持つ人は嚥下機能が低下しやすく、誤嚥性肺炎のリスクが高まります。例えばパーキンソン病のような神経疾患は嚥下機能を障害し、誤嚥を引き起こしやすくする病気です。
また、口腔内の衛生状態が悪い場合も誤嚥性肺炎のリスクを高めます。
このような条件に該当する方やそのご家族は、「風邪かな?」と思うような症状があればそれ以上進行しないように気を配ってみてください。
誤嚥性肺炎は一度かかると繰り返しやすくなる

誤嚥性肺炎が厄介な病気である理由に「一度かかると治っても繰り返しかかりやすくなる」という特徴があります。これは特に高齢者に多く見られ、原因は以下だと考えられます。
- 寝ている間にも細菌を含んだ唾液などを少しずつ誤嚥している
- 誤嚥に気づきにくいため放置してしまい、進行する
- 以前効いた抗生物質の効果が薄れて完治しにくくなる
「寝ている間に誤嚥するなら防げない」と考えるかもしれません。しかし、そこで重要なサポートをするのが歯科医院です。
多くの歯科医院では誤嚥性肺炎の予防に力を入れており、さまざまな方法で誤嚥性肺炎を発症リスクの高い方々から遠ざける努力をしています。
歯科医院のサポートとご家庭でできる予防法を日常生活に取り入れることにより、誤嚥性肺炎の発症リスクを下げることができるでしょう。
日常生活でできる誤嚥性肺炎の対処法

誤嚥性肺炎は日常生活で気をつけることにより、その発症リスクを下げられるようになります。ここでは具体的な対処法について紹介します。
歯科医院による口腔内ケアの重要性
口腔内のケアは誤嚥性肺炎の予防において非常に重要です。ご自宅での丁寧な歯磨きなどはもちろん、定期的な歯科検診も欠かせません。
口腔内のケアは以下のような効果が期待できます。
- 口腔内の細菌を減らし、唾液などの誤嚥からの発症リスクを下げる
- むし歯や歯周病などを予防し、細菌が発生するリスクを下げる
歯科医師や歯科衛生士による口腔内のクリーニングやフッ素塗布は、むし歯や歯周病の治療や予防に役立ちます。
むし歯も歯周病も細菌を発生させる原因になるため、早期の治療や予防が必要ですが、定期検診ですぐに対応できるでしょう。このような理由から歯科医院でのケアはおすすめです。
中には寝たきりの方や身体的・精神的な事情で通院が難しいという方もいます。通院が難しい場合には訪問歯科の利用を検討してみてください。
岡崎歯科でも訪問歯科に対応し、多くの患者さんの口腔内ケアに取り組んでいます。必要な方はお気軽にご相談ください。
嚥下機能を改善・維持する訓練を取り入れる
おとろえた嚥下機能の改善や、現在の嚥下力を維持するための適度なトレーニングも誤嚥性肺炎の予防や再発防止に役立ちます。以下のようなトレーニングを日常に取り入れてみましょう。
- 口の中で舌を回す運動
- 頬を左右にふくらませる運動
このようなトレーニングは嚥下に必要な筋肉を強化し、誤嚥の防止や軽減につながります。
必要であれば、歯科医院や誤嚥性肺炎の予防に力を入れている医療機関などで専門的な指導を受けるのも効果があるでしょう。特に、言語聴覚士による嚥下リハビリテーションは高い効果があるとされています。
嚥下機能の改善は誤嚥性肺炎の予防以外にも、食事がしやすくなって食欲が増し、栄養状態が改善されたり、食事の時間が楽しくなったりするなど、生活の質の向上も期待できることです。
日常での努力に加え、専門的な指導を受けながらトレーニングやリハビリを継続的に行うことも視野に入れ、誤嚥性肺炎の予防や再発防止に努めながら、生活の質も向上させましょう。
食事の際には姿勢や食べ物に注意する
誤嚥性肺炎を予防するには、食事中の姿勢や食事内容の選び方などに注意することも効果的です。まずは姿勢に関して以下を意識しましょう。
- 食事の際は背筋を伸ばして頭を少し前に傾けるようにする
- 食べ物を口に入れたまま話さない
- 口に入れる食べ物の量は少量ずつ
- よく噛んで口腔内の乾燥を防ぐ
座って食事をする場合は、背筋を伸ばし、頭を少し前に傾け、食べ物が気管に入りにくい姿勢を心がけてみてください。
食事中に会話をしながら食べると誤嚥のリスクが高まるため、食べ物を口に入れたまま話さないように気を付けましょう。
それとともに、一度に大量の食べ物を口に入れるのではなく少量ずつ食べることで誤嚥を防げます。「食べる時は静かに、少しずつ」と意識するとよいでしょう。
また、口腔内の乾燥を防ぎ、十分な唾液が出る状態にすることも大切です。
唾液の自浄作用で細菌の増殖が抑えやすくなるため、よく噛んで唾液を出し、乾燥させないようにしましょう。水分を小まめに補給する方法もおすすめです。
食べ物は以下の状態にすると安全性が高くなります。
- 固すぎるもの、粘り気が強すぎるものは避ける
- 患者さんの状態に合わせてやわらかさを調節する
患者さんが咀嚼や飲み込みに負担を感じないやわらかさの食べ物が望ましく、誤嚥を防ぐとともに食べやすくなり、食欲増進や食事の時間を楽しむことにつながる効果が期待できるでしょう。
肺炎球菌の予防ワクチンは接種するべき?
高齢者を対象にしたワクチンの中に肺炎球菌予防ワクチンがありますが、誤嚥性肺炎への効果は明確になっていません。専門医師それぞれの意見がある状態です。
そのため、「誤嚥性肺炎を防ぐために肺炎球菌の予防ワクチンを打つ」という選択はご自分やご家族の判断によるところが大きくなるでしょう。
なお、65歳以上の人に対しては国が肺炎球菌予防ワクチンの定期接種を呼びかけています。興味のある方は、お住まいの自治体の担当窓口などで相談してみてください。
歯科を含めた専門家同士の多職種連携で安心を

誤嚥性肺炎の予防と治療は、歯科医院だけではなく数多くの職種が連携します(多職種連携)。代表的な職種は以下になります。
- 歯科医師
- 歯科衛生士
- 各関係科の医師
- 看護師
- 言語聴覚士
このように数多くの職種が連携を取るのは、患者さん一人一人に適したベストなケアを提供することが目的です。
例えば、歯科医院での口腔ケアを行いながら医師による全身の健康状態の管理を行うとしましょう。
誤嚥される口腔内の細菌を減らしつつ、全身の状態を把握することが可能になり、誤嚥性肺炎のリスクを大幅に減らす結果につながります。
このほか、介護保険を利用するのであればケアマネジャーが、移動のサポートを使いながら通院するのであれば介護士も介入し、患者さんを支えるでしょう。
まとめ
誤嚥性肺炎を放っておくと重篤な状態になってしまう可能性があるため、初期段階で治療を進める必要があります。
初期状態は風邪と似ているため分かりにくいのですが、できるだけ放置期間を作らないよう、「何かおかしいな」と感じたら早めに耳鼻咽頭科などの対応医療機関で受診してみてください。
また、誤嚥性肺炎の予防は歯科医院での口腔内ケアが大きな効果を発揮します。
むし歯や歯周病の防止や口腔内クリーニングは、誤嚥性肺炎の原因になる細菌の増殖を防ぐとともに、快適な口腔環境を作り出し生活の質を向上させるでしょう。
岡崎歯科では高齢者をはじめとしたハイリスクの患者さんに寄り添い、誤嚥性肺炎の予防に効果的なケアやアドバイスをしています。
誤嚥性肺炎を積極的に予防し、皆様がよりよい生活を送るサポートができれば幸いです。どうぞお気軽にご相談ください。
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