訪問歯科を利用できる対象者の条件は?迷った時には歯科医院へ相談を
訪問歯科は通院が難しい患者さんの口腔内ケアを自宅でできる医療サービスですが、一定の基準が設けられているため、利用の際には定められた条件を満たす必要があります。
利用申し込みをする前に訪問歯科の対象者になるかどうかを確認できれば、不安なく手続きを進められるようになるでしょう。
また、一定の基準を知っておくことにより、判断に迷った際は「自分は対象外かもしれないが、判断してほしい」と歯科医院へ相談しやすくなります。
この記事では、訪問歯科を利用できる対象者の条件や、判断に迷いそうな要素などについて詳しく解説します。
訪問歯科の対象者は?利用できる人の条件

訪問歯科の利用は第一に「通院が難しい人」という条件がありますが、その「難しい」には一定の要件が定められています。
ここでは、訪問歯科を利用するための条件について紹介します。
高齢で外出が難しい
訪問歯科は加齢とともに体力や健康状態が低下し、外出が困難になる高齢者も対象であり、特に以下のような状況の方が代表例です。
- 加齢による身体状況の事情で歩行が困難
- 長時間の外出が体力的に難しい
このような高齢者にとって、訪問歯科は口腔内の健康を守るための重要な手段になります。
また、高齢者が家族の支援を受けながら自宅で治療を受けられる点も大きなメリットです。
さらに、高齢者施設に入居している場合も訪問歯科の対象です。
施設内での生活は外出の機会が限られるため、定期的な歯科検診や治療は難しくなりますが、訪問歯科を活用することによってその問題が解決されるでしょう。
身体障がい・精神障がいがあり通院が難しい
身体障がいや精神障がいを持つ人々も訪問歯科の対象です。訪問歯科の利用により、以下のようなメリットが生まれます。
- 障がいに起因する通院ストレスの軽減
- 慣れた環境で診療・治療が受けられる安心感
身体障がいがある場合、通院そのものが大きな負担になることは少なくないため、移動の負担を軽減する訪問歯科はおすすめの方法になります。
また、精神障がいを持ち、通院にストレスを感じる人にとっても訪問歯科は有益です。
慣れた環境の自宅で安心して口腔内ケアが受けられることは、精神的な負担の軽減につながるでしょう。
寝たきりで通院が難しい
病気や障がいなどの理由で長期間寝たきり状態にある場合も、訪問歯科を利用することができます。
こうした方々は外出することが困難なため、訪問歯科はやはり重要な健康維持手段になるでしょう。
寝たきりの状態では口腔ケアが行き届かず、口腔内の健康が悪化するリスクが高まります。
訪問歯科を利用することで、定期的な口腔ケアが可能となり、全身の健康維持が促進され、生活の質を向上させる一助になるでしょう。
定められた種類の住居に居住している
訪問歯科が対象とする住居には一定の条件があり、訪問先は「寝泊まりする住居」に限定されています。
一般社団法人・日本法人歯科協会によると、対象になる訪問先は以下の通りです。
居宅 | 1:患者さんが居住する戸建住宅・集合住宅 2:以下の居住系施設 ・養護老人ホーム ・軽費老人ホーム ・有料老人ホーム ・小規模多機能型居住介護(宿泊サービス利用限定) ・グループホーム ・サービス付き高齢者向け住宅 |
施設 | ・介護老人福祉施設(特養) ・介護老人保健施設(老健) ・介護療養型医療施設 ・介護医療院 ・歯科施設を持たない病院・診療所 ・障害者支援施設(要入所) ・障害者支援施設 ・医療型障害児入所施設 ・福祉型障害児入所施設 ・医療型障害児入所施設 ・短期入所生活介護(ショートステイ) |
基本的に「居住・入居」が条件になるため、デイサービスやデイケア、障がい者通所施設は対象外となります。理由は以下の通りです。
- 通所施設は通院可能な環境であると見なされること
- 訪問歯科の目的は継続的・定期的に口腔内ケアをすること
具体的には、自宅や高齢者施設、障がい者施設などは対象となりますが、日中のみ利用する施設は対象外になるということです。
これは訪問歯科が継続的・定期的なケアを提供することを重視しているためです。
そのためには利用者が日常的に過ごす場所でのケアが重要であり、通所が基本になる施設での訪問歯科は利用できません。
ただし、あくまで「その場所では不可能である」というだけで、ご本人に通院が困難である理由があれば、居住・入居している場所で訪問歯科が利用できます。
「通所しているけれど通院は難しい」という場合には、通所がお休みの日やご帰宅後に自宅で訪問歯科を利用するなどの方法を検討してみてください。
対象者を判断するのは法律?歯科医師?

人によっては前述の条件に合わず、「訪問歯科を使えないかも……」と心配になるかもしれませんが、実際、対象になるかどうかは以下のように歯科医師の判断に委ねられています。
- 訪問歯科の対象を判断するのは歯科医師
- 個々の事情を考えて柔軟な判断が行われる
たとえば「精神疾病があるけれど外出そのものはできる、でも通院はストレスがかかりすぎてきつい」と考える人もいるのではないでしょうか。
その際は、まず訪問歯科に対応している歯科医院へ相談してみてください。
歯科医師が患者さん1人1人の状況をヒアリングして柔軟な判断を行うため、ご自身の予想と異なり、訪問歯科の対象になる可能性があります。
「これは大丈夫?」と心配になりそうなこと

幅広い人が使える訪問歯科ですが、中には「それでも自分は使えないのでは?」と心配になる要素がある人もいるかもしれません。
ここでは、訪問歯科の対象者になるかどうかの予想に迷いそうな要素について紹介します。
諸事情で医療保険や介護保険が使えないけど大丈夫?
訪問歯科の診察・治療では医療保険や介護保険が使えますが、「保険に加入していないから訪問歯科を使えない」ということではありません。
何らかの理由で適切な保険を使えないとしても、自費診療で訪問歯科を受けられる可能性があります。その際には以下のことに注意しましょう。
- 負担金額は10割になることは理解しておく
- 歯科医院によっては対応が異なるケースも考えられる
ただし、自費診療は費用面での負担が非常に大きくなり、資産に余裕がある方以外にはあまりおすすめできない選択であることも確かです。
場合によっては地域の福祉サービスや支援制度の対象になる可能性もあるため、まずは地元の自治体窓口に相談してみることをおすすめします。
年齢が若くても大丈夫?
訪問歯科の対象は「通院が困難な人」であるため、年齢制限はなく、若い患者さんでも利用できます。以下のような際は、若くても訪問歯科の利用を検討してみてください。
- 慢性的な疾患や障がいで通院が難しい
- 事故や病気などで一時的に通院が困難になった
このような事情があれば通院困難であるという判断がされるため、訪問歯科の対象者になります。
近所に訪問歯科がなくても大丈夫?
訪問歯科を利用するためには、訪問歯科に対応している歯科医院が半径16km内である必要がありますが、地域によっては半径16kmを超えた場所になってしまうこともあるでしょう。
その際は自費診療であれば訪問歯科の利用が可能になります。
訪問歯科を利用する際には以下のことを意識しておきましょう。
- 訪問歯科は対応歯科医院が半径16km以内なら保険診療が可能
- 半径16kmを超えると保険診療の対象外である
- ただし事情によってはその限りではない可能性もある
事情によっては半径16kmを超えても保険対象になる可能性があるため、はじめから諦めずに歯科医院やケアマネジャーへ相談してみてください。
また、訪問歯科の対象範囲外に住んでいる場合でも、ケアマネジャーや自治体窓口などに相談することで、解決策が見つかることがあります。
ご自身の判断だけであきらめず、該当の窓口への連絡をおすすめします。
「訪問」と「往診」はどう違う?

訪問歯科は患者さんの自宅をはじめ、お住まいの場所へ歯科医師や歯科衛生士が足を運んで診療・治療を行うものですが、「往診」とは異なります。
ここでは、「訪問」と「往診」の違いについて詳しく紹介します。
「訪問」は計画的・継続的に行われる
「訪問」とは、計画的かつ継続的に行われる医療サービスのシステムです。
訪問歯科においては、患者さんのニーズや健康状態に基づいて、定期的に歯科医師や歯科衛生士が自宅や施設を訪れ、診療や治療を提供します。
訪問歯科は、以下のようなシステムです。
- 継続的にケアできるため予防効果・治療効果が高い
- 患者さん1人1人の状態に合わせた治療計画が立てられる
このシステムによって継続的な口腔ケアが可能となり、予防的な措置や治療の効果を最大限に引き出せるようになります。
計画的な訪問は患者さんの状態を定期的にチェックし、必要に応じて治療計画を調整するため、1人1人に合わせながら、口腔内の健康を長く維持することに役立ちます。
「往診」は突発的な状況への緊急対応
一方「往診」とは、突発的な病状悪化や急な健康問題に対して、医師が患者さんの自宅や現場に急行して診療を行うシステムです。
往診は計画的な訪問とは異なり、緊急対応が求められる状況で行われます。
例えば、突然の痛みや出血、急激な体調変化などに対応するために、医師が迅速に現場へ向かう場合は「往診」です。
往診は予期せぬ事態に迅速に対応できる重要な医療システムです。
特に、移動が難しい患者さんや、医療機関へのアクセスが困難な地域に住む患者さんにとっては、往診は心強い味方になるでしょう。
往診と訪問のどちらか迷った際には、以下を参考にして考えてみてください。
- 通院が困難な患者さんでも緊急時の身体トラブルに対応可能
- 継続的・定期的な治療を希望する場合は「訪問」がよい
しかし、往診はあくまで緊急対応のためのものであり、継続的な治療や計画的なケアを提供するものではありません。
歯科も同様であり、継続的・定期的な口腔内ケアを必要とするのであれば、計画的に健康管理を進めていける訪問歯科をおすすめします。
まとめ
訪問歯科は通院が困難な人を対象にした医療システムです。加齢による身体機能のおとろえや障がいなどをお持ちなら、多くの患者さんが利用できます。
ただし、「居住している住宅・施設」という条件もあるため、デイサービスやデイケアの施設で利用することはできません。
ほかにも「自分や家族は訪問歯科を利用できる?」と悩むようなことがあれば、自治体の窓口やケアマネジャー、訪問歯科に対応している歯科医院などへ相談してみてください。
岡崎歯科では「すべての人に必要な医療を」をモットーのひとつとしており、訪問歯科にも積極的に対応しています。
お困りのことやお悩みなどがあれば、まずはお気軽にご相談ください。
#訪問歯科治療