摂食と嚥下の違いは?摂食・嚥下障害の有効なリハビリや予防法も解説
摂食と嚥下はどちらも「食べる」ことを指す言葉ですが、それぞれどういった意味があるのか、違いはなにかまでくわしく知っている人は少ないでしょう。
加齢や病気などさまざまな原因で、食事を食べることが難しくなる摂食・嚥下障害になってしまう場合があります。
食べることは生きることであり、日々の楽しみの1つになっている人も多いでしょう。
食べられなくなる、食べることが難しくなるのは非常に辛いものです。
この記事では、摂食と嚥下の違いや摂食・嚥下障害に有効なリハビリや予防法についてわかりやすく紹介します。
摂食と嚥下の違いについて知りたい人、いつまでも食事を楽しみたい人はぜひ最後までご覧ください。
摂食・嚥下とは?

摂食・嚥下とは、食べ物を認識・口に取り組む・咀嚼・飲み込むまでの一連の流れを指します。
まずは摂食・嚥下の違いや摂食・嚥下障害の症状や原因について解説します。
「摂食」と「嚥下」の違い
摂食と嚥下はどちらも「食べること」を指しています。
それぞれの違う点としては、「食べる行為のどの部分を指しているか」が異なります。
摂食は「食べ物を食べること全体」、嚥下は「食べ物を口のなかから食道を通って胃に送り込むこと」を指しています。
つまり嚥下は摂食行動のなかの1つです。
摂食・嚥下障害とは?
摂食・嚥下障害とは、食べ物を認識・口に取り組む・咀嚼・飲み込むまでの一連の流れが障害された状態のことです。
飲み込むことのみが障害されている場合は「嚥下障害」と呼ばれ、区別されることもあります。
摂食・嚥下障害の症状は、その人や障害の原因などによってさまざまです。
主な症状には以下のようなものがあります。
- 飲食中によくむせる
- 固形物を飲み込めない・飲み込みにくい
- 咀嚼中に口から食べ物がこぼれてしまう
- 食事に時間がかかる
- 食後に痰がよく出る など
摂食・嚥下障害を放置すると、食事量が減ってしまったり食事自体が難しくなったりします。
その結果、低栄養状態になり体重の減少・免疫力や体力の低下や脱水などさまざまな問題を引き起こします。
摂食・嚥下障害の疑いがあれば、できるだけ早く対処するようにしましょう。
摂食・嚥下障害の原因
摂食・嚥下障害の原因はさまざまですが、主な原因は以下の5つです。
- 先天的形態異常:唇顎口蓋裂など
- 後天的形態異常:歯列咬合の不正・手術による解剖学的欠陥など
- 神経・筋系の障害(発達障害):脳性麻痺・精神発達遅滞など
- 神経・筋系の障害(中途障害):脳血管障害・パーキンソン病など
- その他:加齢による機能低下など
成人で摂食・嚥下障害になる原因で多いのは、脳血管疾患です。
摂食・嚥下の動作は脳で制御されていますが、脳血管疾患になり脳の中枢や神経回路に損傷が生じると摂食・嚥下の動作がスムーズに行えなくなります。
高齢になると、脳血管疾患だけではなく加齢による筋力などの機能低下によって摂食・嚥下障害になる場合もあります。
摂食・嚥下障害に有効なリハビリ

摂食・嚥下障害を放置すると、体重低下や低栄養状態などさまざまな問題があります。
摂食・嚥下障害を悪化させないためにも、リハビリを行うのがおすすめです。
ここでは、摂食・嚥下障害を疑った場合はどの科を受診したらよいか、リハビリを受けるまでの流れなどを紹介します。
「摂食・嚥下障害かも?」と思ったらこちらを参考にリハビリに進みましょう。
摂食・嚥下障害を疑ったら歯科などを受診
摂食・嚥下障害かも?と思ったら、以下の科がある病院を受診してください。
- 耳鼻咽喉科
- リハビリテーション科
- 神経内科
- 消化器科
- 歯科
- 歯科口腔外科 など
病院では、摂食・嚥下障害なのかどうかの診断や、どの程度障害が進んでいるのかを確認する検査を行います。
主な検査方法は以下のとおりです。
検査名 | 検査方法詳細 |
水飲みテスト | ・水を30ml程度を飲み、うまく嚥下できているかを確認する検査 ・検出力が高く、患者の負担が少ない検査 |
反復唾液嚥下テスト | ・嚥下時に咽頭が上がる様子を触診で確かめる ・30秒間に何回嚥下できるかを調べる ・簡単で安全性が高い検査 ・誤嚥スクリーニング検査や経過観察にも適している |
嚥下造影検査 | ・既に摂食・嚥下障害が疑われる場合などに行う ・X線で透視しながらバリウムを飲み、嚥下時の全体的な動きを観察する ・誤嚥の有無や食べ物が残るかどうかを確認する ・稀にバリウムに対してアレルギー反応が出る人がいる |
嚥下内視鏡検査 | ・鼻からファイバースコープを挿入し、喉の汚れや動きを観察する ・嚥下造影検査よりも手軽 |
摂食・嚥下障害かもしれないと思った症状や、病院の設備によってどの検査を行うかは異なります。
摂食・嚥下障害のリハビリに関わる専門職
摂食・嚥下障害のリハビリに関わる専門職と役割は以下のとおりです。
- 医師:摂食・嚥下障害に関する検査や診断、必要であれば手術による治療の実施
- 歯科医師:口腔周辺の健康を守り、検査・診断・訓練など幅広く対応
- 言語聴覚士:嚥下回復機能回復を目的としたリハビリの実施
- 看護師:食事摂取方法の判断や指導、医師の診療補助
- 歯科衛生士:口腔内の疾患対策や予防、口内環境や機能改善を目的とした処置と訓練
- 栄養士:食事形態の調整や食事指導
- 作業療法士:食事中の動作や姿勢の改善と評価 など
このような専門職の人たちが連携し、必要な摂食・嚥下障害のリハビリを行います。
リハビリを受けるまでの流れ
摂食・嚥下障害かもしれないと思ってから実際にリハビリを受けるまでには、大きく4つの流れがあります。
- 医療機関の受診
- 嚥下機能をはかる検査の実施
- リハビリ方針の検討と決定
- リハビリの実施
摂食・嚥下障害かもしれないと思ったら、まずは歯科などの医療機関を受診しましょう。
そこで、摂食・嚥下障害の有無やどの程度の嚥下機能かをはかるために水飲みテストなどを行います。
検査結果をもとに、嚥下機能がどの程度衰えているのか、どういったリハビリが必要なのか、リハビリ方針などを決めます。
リハビリ方針などが決まれば、実際にリハビリを行い嚥下機能の改善を目指します。
リハビリを行っても嚥下機能の改善が見られない場合や摂食・嚥下障害になった原因によっては、手術を行う場合もあります。
有効なリハビリ
摂食・嚥下障害に有効とされているリハビリは、食べ物を使用しない間接訓練と食べ物を使用する直接訓練の2つです。
間接訓練では、口や舌などの体操やマッサージを行う嚥下体操などを行います。
直接訓練では、薄くスライスしたゼリーを丸飲みしたり、固形物と流動物を交互に食べる交互嚥下法が行われます。
なお、リハビリテーション前には誤嚥性肺炎などの感染症の予防、口腔環境維持のための口腔ケアも合わせて行われます。
摂食・嚥下障害を予防する方法

病気などが原因の摂食・嚥下障害を予防することは難しい面がありますが、加齢による摂食・嚥下障害であれば予防できる場合があります。
ここでは、摂食・嚥下障害を予防する方法を4つ解説します。
筋力の維持
加齢で摂食・嚥下障害になる場合、筋力低下が原因の可能性が高いです。
そのため、摂食・嚥下に使用する部分の筋力維持ができれば、摂食・嚥下障害を予防できるでしょう。
筋力の維持は、口をすぼめたり舌をだす嚥下体操の実施が効果的です。
摂食・嚥下に使用する筋肉だけではなく、身体を動かして全身の筋力維持を目指すことも効果があるといわれています。
筋力維持のための運動や体操をする際には、決して無理をせず自分のできる範囲で行うようにしてください。
嚥下レベルに合わせた食事
日々の食事は現在の嚥下レベルに合わせた内容のものを食べるようにしましょう。
摂食・嚥下障害であれば、ゼリー状やペースト状など咀嚼しなくても飲み込める食事などが用意されます。
しかし、軽度の摂食・嚥下障害の人や、まだ摂食・嚥下障害ではない人は日常的に噛まなくてもよい食事をしていると、咀嚼などに使用する筋力の低下を招きます。
柔らかいものを食べてはいけないわけではありませんが、しっかりと噛んで食べれるような食事も取り入れるように意識しましょう。
一度に口に入れる食事量の注意
一度に多くの食べ物を入れてしまうと、しっかり噛めずに大きい状態で飲み込むため誤嚥やつまりの原因になります。
食事はしっかりと噛める量を一度に入れるように心がけてましょう。
食事をしっかり咀嚼する行為は胃腸に優しく脳への刺激になるだけではなく、摂食・嚥下に関わる筋肉を鍛えることにもつながります。
日々の食事から、しっかり噛むことを意識してみましょう。
定期的な専門的口腔ケア
口腔ケアは大きく日常的口腔ケアと専門的口腔ケアに分かれています。
日常的口腔ケアは、食後のうがいや歯磨きなど自分で日常的に行っている口腔ケアです。
一方で専門的口腔ケアは、歯科などで行う虫歯や歯周病などの治療、日常のケアではできない部分の口腔ケアになります。
特に虫歯や歯周病などの病気は、摂食・嚥下障害の原因になる場合もあります。
日常的口腔ケアだけでなく、定期的に歯科を受診して専門的口腔ケアを受けて、口腔ケアに関するアドバイスなどを受けましょう。
当院の訪問歯科についてはコチラのページをご覧ください。
まとめ
摂食・嚥下はどちらも「食べること」ですが、摂食は食べ物を食べること全般、嚥下は食べ物を口のなかから胃へ送り込むことを指しています。
摂食・嚥下障害を放置すると、体重低下や低栄養状態などさまざまな問題があり、悪化させないためにも、間接訓練や直接訓練などを行うのがおすすめです。
また、摂食・嚥下障害を予防するためには、筋力の維持や定期的な専門的口腔ケアなどを行いましょう。
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