嚥下時の舌の動きとその重要性とは?毎日できる機能向上方法も紹介!
加齢やさまざまな事情によって舌の動きがにぶくなることがありますが、そのまま放置しておくことはよいことではありません。
舌の動きは嚥下時に大切な働きをしており、動きがにぶると食生活や健康状態に思わぬ影響が現れるようになります。そのため、舌の動きがにぶったと感じる人は改善を意識するとよいでしょう。
舌の動きを改善するためには、改善する方法のほか、舌の動きや重要性を理解しておくと納得して取り組みやすくなり、高い効果が期待できます。
この記事では、嚥下時の舌の動きやその重要性、にぶった舌の動きを改善する効果的な方法などについて詳しく紹介します。
嚥下時の舌の動きはなぜ重要なのか?

食べ物を安全に、かつ効果的に喉に送るため、嚥下時の舌の動きを意識することは重要です。普段意識せずに動かしている舌ですが、以下のような役割を知らず知らずのうちに果たしています。
- 咀嚼を助け、唾液と混ぜ合わせる
- 味覚を感じる機能を持ち、食物の安全性を確認する
この役割は舌がしっかりとした働きができるからこそ可能になります。もしもこの機能がうまく働かない場合、以下のような恐れが生まれるでしょう。
- 飲み込みにくい状態のまま食物を嚥下し、誤嚥の可能性が高くなる
- 味覚が鈍ると鮮度が落ちた食物の危険性に気付けない
こういった可能性を遠ざけ、健康的な生活を送るためにも、舌の運動能力はできる限りの維持が大切です。
飲食で行われる舌の動きや役割とは

飲食をするたびに舌が動き、嚥下を行いますが、具体的にはどのような動きをしているのでしょうか。ここでは、舌の構造と働き、動き方などについて紹介します。
舌の構造と働き
舌の解剖学的構造は複雑であり、多くの筋肉が協調して働くことで、食物の移動や咀嚼、嚥下を可能にしています。主に以下のような働きが見られます。
- 食物を臼歯部に送り、咀嚼後に咽頭へ送り込む
- 流動食物の場合は食物を一気に咽頭へ送るための運動する
このような働きは、食物のスムーズな取り込み(飲み込み)と消化に欠かせません。スムーズな食事や消化は健康維持に大切で、元気に毎日を送るために欠かせない要素です。
嚥下時の舌の動きはどうなっている?
嚥下時の舌の動きはとても巧みで、口腔内での食物の効率的な移動や円滑な咀嚼・嚥下を行います。
下顎や口唇、頬と協調しながら口腔内の食べ物の塊(食塊)をコントロールし、咀嚼・嚥下までのすべてのプロセスに関わるほど舌の働きは重要です。
いつも意識せずにしている「奥歯で噛み、飲み込む」「液体を飲み込む」という動作ですが、前述の通り、その動作では舌が多くの働きをしています。
「舌の動きがにぶると食事が大変」という点も納得できるでしょう。舌の運動をさまたげる障害や筋力低下がある方の場合、咀嚼と食塊形成が不十分になるということは大きな問題です。
そのような場合、口腔内に食物が残留してしまったり、まとまりのない食塊が咽頭に送り込まれてしまったりするなど、さまざまな影響を及ぼし、スムーズな食生活が楽しみにくくなってしまうでしょう。
舌の動きを確認・評価する方法

嚥下に影響がないかどうか、舌の動きの確認は大切です。ここでは、どのような点に注目して舌の動きを確認するのかを紹介します。
舌の動き・発音を確認する
舌の突き出し方、後退する動き、左右移動などの運動を評価することで、舌の機能状態を確認します。
また、発音評価も行い、嚥下能力との関連性を確認することも重要です。例えば、「パ」「タ」「カ」などを患者さんに発声してもらい、その発音で舌の動きがどの程度であるかを測ります。
舌の動きは嚥下障害の診断にも関わるため、チェックする際には詳細な確認が必要です。
ご自宅ではなく、医療機関で医師が確認する際には少し時間がかかるかもしれませんが、大切なことですのでしっかり行いましょう。
舌圧測定をする
舌圧測定は、舌の筋力を評価するための方法です。舌圧の確認が必要な理由は以下になります。
- 舌圧は口に入った食物を上あごでしっかり潰すために必要
- 正常な舌圧でなければ嚥下に悪影響が出ることもある
正常な舌圧は嚥下の際に食物を適切に移動させるために必要であり、舌圧が足りない場合は嚥下障害や誤嚥の原因になりかねません。
そのため、舌圧測定を行うことによって嚥下機能の低下を早期に発見できる可能性が高くなり、適切な対策につながります。
舌圧を測定する際は、プローブにバルーンがついたデジタル舌圧計を使います。測定方法は以下が一般的です。
- 舌圧プローブのバルーンを口腔内に入れ、舌を上下させる
- 舌と口蓋の間でバルーンを強く押し潰す
この際に、バルーンを押し潰した時の圧力を最大舌圧として計測します。専門知識を持った医療従事者が行うため、リラックスして検査を受けてみてください。
舌の動きが衰えと生じやすい影響

舌の動きが衰えると、口腔内に食物が残留したり、誤嚥・窒息・栄養不足などの恐れが生じたりします。それぞれの具体的な理由は以下になります。
食物の残留 | 舌が食物を適切に咀嚼する歯や咽頭に運べず、口腔内に食物が残ってしまう |
誤嚥 | まとまりのない食塊が咽頭に送られ、飲み込みにくく、誤嚥のリスクが高まる |
窒息 | 誤嚥した食物が気道に詰まり、窒息の危険性が高まる |
低栄養 | 嚥下が困難になって食欲や摂取できる栄養が減少し、栄養不足が起こる |
舌の動きの衰えにはこのようなリスクがつきまとい、時には生命をおびやかす可能性もあるものです。
また、「食事が苦しい、楽しくない」と感じるようになれば、生活の中で張り合いが失われるかもしれません。「苦労なく食事ができる」ということは、生活の質を左右する重要な要素でもあります。
舌の動きが悪いと感じた際には、できるだけ早めに歯科医院などで確認し、適切なトレーニングを取り入れて改善を目指しましょう。
舌の動きを向上させるトレーニング

舌の動きが悪くなったと感じたら、改善するトレーニングを取り入れてみましょう。ここでは、舌の動きの向上に効果が期待できる基本的なトレーニングや、専門的なトレーニングについて紹介します。
基本的なトレーニング
基本的なトレーニングは舌の筋力強化や運動範囲の拡大に効果が期待できる方法です。以下のような動きを意識してみましょう。
- 舌を突き出す
- 舌を左右に動かす
- 舌の先端を上げ下げする
手軽にできる動きですが、このようなトレーニングは舌の柔軟性と筋力を高め、嚥下機能を向上させる効果が期待できます。
例えば、「あっかんべー」とするように舌を思い切り出し、1分ほどキープしてから喉の奥に引っ込めるなど、ゲーム感覚で楽しんでみるのもいかがでしょうか。
ゲーム感覚で舌の筋肉の収縮と弛緩の機能を強化できるため、「トレーニングは継続するのが難しいんだよね……」という方にもおすすめです。
専門的なトレーニング
専門的なトレーニングは基本的に専門家の指導や管理のもとで行われ、以下のような方法が選択されます。
- バルーン型プローブを使用したトレーニング
- 吹き戻しを使った呼気筋トレーニング
このようなトレーニングは前述の一般的なトレーニングのように舌の筋力を強化するものですが、専門家の指導のもとで適切に行うことで、より高い効果が期待できます。
また、バルーン型プローブを使用したトレーニングは、舌の圧力を測定しながら行うこともできるため、患者さん一人一人の状態に合わせた効果的なトレーニングが可能です。
興味や関心をお持ちの方は、かかりつけの歯科医院や耳鼻咽喉科などで相談してみてください。
歯科医院でできる嚥下ケア

舌の動きを含めた嚥下ケアは、歯科医院でも継続的・定期的に受けられます。ここでは、歯科医院でできる嚥下ケアについて紹介します。
嚥下機能の検査・診断
歯科医院では嚥下機能を確認するため、検査と診断を行い、患者さんの舌の動きや嚥下についての様子を観察し、検査結果を基に適切な治療計画を立案します。
専門的なトレーニングに興味がある方は、この時に相談してみるのもおすすめです。
また、お身体の状態やライフスタイルなどのご事情で歯科医院へ行くことが難しいのであれば、訪問歯科を選択していただくことも可能です。
訪問歯科の利用にはいくつかの条件があるため、事前に必ずご確認ください。
歯科医師・歯科衛生士による専門性の高いケア
歯科医院では歯科医師や歯科衛生士によるサポートのもと、専門性の高いケアを安全な環境で受けられます。例えば以下のようなトレーニングなどが該当します。
- 舌の運動能力を向上させるためのトレーニング
- 嚥下機能を改善するためのアドバイス
前述の専門家によるトレーニングは歯科医院でも指導が可能であり、舌の動きや嚥下機能をより改善していきたいと願う患者さんやご家族も安心できるでしょう。
また、定期的に歯科医院で舌の動きや嚥下機能を確認することもおすすめです。口腔内の健康をチェックする定期検診などと組み合わせながら、口腔内の衛生や健康的な嚥下機能を守っていきましょう。
まとめ
舌の動きは嚥下機能に深く関わり、衰えればさまざまな悪影響が出てしまいやすいものです。
咀嚼しにくくなる・飲み込みにくくなるといったことから、時には誤嚥・窒息・栄養不足のように、生命や健康をおびやかす恐れも持っています。
安全に飲食を楽しみ、健康的に過ごすためには、舌の動きの衰えに気づいた時点で早めの対策をすることをおすすめします。かかりつけの歯科医院などに相談して、改善ケアや指導を受けてみてはいかがでしょうか。
岡崎歯科では健康的な嚥下機能の維持や改善のため、舌の動きに関しても注意を払っています。むし歯や歯周病などの一般的な検査のほか、気になる方は舌の動きの確認などもご相談ください。
ご自宅でできるセルフケアや手軽なトレーニングなど、患者さんのご事情やライフスタイルに寄り添ったご提案をさせていただきます。
#嚥下 #嚥下障害 #訪問歯科 #舌圧